二畳半生活

ぼんやりとした概念を具体化する作業途中です

土地の話

ゲニウス・ロキ」という言葉がある。なんだかおどろおどろしい印象を受けるがどこか魅力的でもある。この言葉イギリスで18世紀ごろに注目されだした概念で、もとはラテン語。「ゲニウス」は物事に付随する守護の霊「ロキ」には場所・土地という意味がある。つまり「ゲニウス・ロキ」とは土地から引き出される霊感とか土地に結び付いた連想、あるいは土地がもつ可能性といった概念になるそうだ。日本語にすると地霊という言葉が近いらしいがそう言い切ってしまうとなんだか土地を擬人化して、多くの意味が漏れ出してしまう気がするので、ここでは長いけれど「ゲニウス・ロキ」を使い続けようと思う。

 鈴木博之著の『東京の[地霊]』を読んだ。東京という都市の変遷を土地の移り変わりから読み解いている良著であり、浅学な私にとって知らない昔の歴史は知っている土地をより奥深く見させてくれるものであるなあと感心しながら読んでいた。

 現在東京、といえば23区をさすことがそこそこある。この本でも扱っているのは東京23区の地域だけである。それだけ人や建物の動きが激しくいろいろな物語が消えては生まれて見えて面白い、興味の対象になりやすいのだろう。土地に建物や歴史を勝手につくるのも、歴史を読み解くのも人の仕業であるのだから、勿論歴史は人がつくるものといった解釈は決して間違っていないのだ。しかし私は土地や人間が造った建物からも人の想像を超えた力があるのではと思ってしまう。都市の面白さは人、そしてそのつながりが生み出す物事に起因する部分も多いが、それ以外の建物や土地・地形が生み出す部分もあると考える。東京はおそらく前者の部分が、そして京都ふくむ観光都市はいささか後者が強調されすぎているきらいが無きにしも非ずである。

人が一か所に集中するきらいがあるのは仕方ないことかもしれないが、東京でも文化財だって多くあるのだし建物や土地の歴史に目を向けてみたほうがよいのではないかとも思う。