『行動経済学の使い方』読書メモ
読んで良かった点についてです。
●行動経済学の既往研究の成果が簡潔にまとめられている
プロスペクト理論、フレーミング、保有効果、サンクコストへの誤謬……といった既往研究の成果が極めて濃縮されてまとめられています。どれくらい濃縮されているかというと、ダン・アリエリー著『予想どおりに不合理』1冊に書かれた内容、ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー』上下巻2冊にまとめられた内容のポイントが本書の1章(約40ページ)で簡潔にまとめられています。結論だけでいいので行動経済学について覗いてみたい方にはうってつけの本です。
ただ、行動経済学の魅力の1つである(と思っている)、研究結果が腑に落ちるという観点でみると、その感動は上記2冊に比べて薄いように感じます。感動を得たい方、ストーリー形式でわかりやすく学びたい方は上記2冊も手に取る価値があると思います。
●ナッジについても簡潔にまとめられている。
行動経済学的特性を用いることで、選択者に選択の自由を残しながら、金銭的なインセンティブを用いずに、よりよい行動を促す手法であるナッジについても、考え方から設計・チェックの仕方、実際にナッジを用いた実例について、2章において簡潔にまとめられています。
とくに設計の方法については本書のタイトル『行動経済学の使い方』が示す通り、読者が行動経済学の研究成果をどのように仕事で人を動かす、または自分の人生を動かしていくかを考える際、指針の1つになるように感じました。
●使用されてる事例が身近
本書の3章以降では行動経済学が読者の生活に及ぼす影響、社会制度に生かされてきた事例について身近なところでは仕事のモチベーションの生み出し方、大きな話題では、給与制度や消費税などについても記されています。社会的な応用事例を中心に扱った書籍は初めて読んだので勉強になりました。
登場した事例の中で特に面白かったのは、最善の策より次善の策という部分、目標が高すぎる、大きすぎる、遠すぎると達成した時の魅力が達成するまでの労力に合わせられず、達成できないことも多い。あえてそれよりは効果は薄いかもしれないが小さな目標を毎日こなしていくほうが結果大きな成果を得られることもある、という身につまされるお話でした。
●巻末の文献紹介量が豊富
論文から入門書まで23ページにわたり紹介されています。英語論文もあります。
自分にとっては本書の一番よかったところです。もうすこし行動経済学について勉強してみたいけれど周りにくわしい人がいない、インターネットのふわっとした文献紹介の本はだいたい手にとってきた、書店のタイトル検索は数が多すぎてどれから読もうという状況だったので、読んでいない本を複数含む文献紹介はありがたいです。次読んでみたい本も見つかりました。
最後に
●久しぶりの更新について
文章を書こう書こうと思い、その為の本も読んでいたけれど、いざパソコンの前に座って落ち着いて頭の考えを文字に起こす作業が出来ず更新がご無沙汰してしまいました。
文章を書くのは嫌いではないですが、ある程度以上の長さの文章を書くのは得意とも言えないかと内省しました。とはいえ、思ったことを伝えたい衝動はあきらめきれないのでこれからもゆっくりとでも続けていきたいです。