二畳半生活

ぼんやりとした概念を具体化する作業途中です

『実践行動経済学』読書メモ

 リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン著『実践行動経済学』の読書メモです。なお、リチャード・セイラーさんは2017年に「行動経済学への貢献」という理由でノーベル経済学賞を受賞されております。

 本書の概要、面白かった点、感想について書きます。

 

●本書の概要

 本書の構成は大きく4部に分かれます。

 最初の章では本書を読む際の基礎知識としての、一般に人間が選択する際の傾向、どのように選択肢をつくれば人間の選択に影響を及ぼすことができるのか書かれています。これまで行動経済学の本を何冊か読んでこられた方にはお馴染みの内容かもしれません。

 次の章では、貯蓄、投資、クレカの支払などを例にとり、政府、もしくは雇用企業はどのような制度設計をすれば人間の選択は望ましい方向に向くのか、どのようなナッジを取り入れるべきか具体例をもとに記されています。

 3章は2章と題材は異なりますが、大まかな話の流れは経済以外の医療制度、環境問題、婚姻制度を例にとり、またしても政府等の制度設計者はどのような選択を国民に提供するのが望ましいのか書かれています

 4章は全体のまとめとして、具体的な選択設計案、理想的な選択設計についてです。

 この本の読み手が忙しい方の場合、1章の流し読みと4章だけでも十分選択設計やナッジについての理解が深まるのではないかと思います。

 

●面白かった点

〇選択肢の数と人間の判断力の限界について

 人間の判断には合理的からは遠いバイアスがかかっています。選択には毎日実行するもの(本日の昼食)から一生に1度、2度しかないものまで回数の差があります。また、選択するための判断材料、知識が十分にあるかないかについても当然ながら差があります。

 判断する知識が乏しく、これまで経験した選択回数が少ない問題については多数の状況にあった選択肢を用意することよりも、良心的なデフォルトの選択肢を用意してやるほうが、よい結果につながるということについて、本書ではいくつか例を用いて説明されています。

 オーダーメイドよりも、デフォルトのほうが満足度が高いということは、肌感覚と異なる部分もあったのが面白かったです。ただ、買い物をする際を振り返ってみると知識が乏しい品物、めったに買わない品物(家電製品など)では、売れ筋ランキング上位に選んでいるところに、確かにデフォルトが与えられるのは選択をするうえで楽になり、選択できない状況を防げるという点ではよい制度設計だなと思いました。

 

〇結婚の民営化について

 本書では結婚制度について、現代では離婚に対する制約が薄くなってきている点、既婚者、未婚者間の不平等を理由に挙げて結婚の民営化が可能ではないのかと論じています。

 社会慣例の一種として普段は目に見えずらいのですが、今のアメリカでは(日本でも)結婚というのは政府が用意している保証制度の1つであることを結婚に付随する権利とともに示したこと、民営の保証される権利についても選択可能なパートナー制の可能性を示したということが、本書が出版された2008年当時では新しい考え方に思えたこと、昔は当然と思われた法制度についても、時代状況が変われば制度を変更したほうがより良い場合もあると示したことの3点の発想に特に感銘をうけました。

 これまでの行動経済学ではあまり触れられなかった、社会に根付いた選択肢設計の考え方がなされていて面白かったです。

 

 ほかにも面白い箇所はいくつもあったのですが、長くなってきたので省略します。

 

●最後に感想というか自省

 人間が本人が達成したいと思っている目標を達成できないことはしばしばあります。

 例えば、このブログについて、2019年当初は年10本の更新を目標にしておりました。実際に書いている記事数は5本です。達成率半分のこの数字を高いか低いかはおいておいて、この目標を達成するために、もっと出来ることがあったのになと反省しております。

 今思いつく限りで羅列してみても以下のことが挙がります。

〇行動面でできたこと

 ・さらに本屋さん、図書館に足を運んで読んでみたい本を増やすこと、

 ・通勤時間等の隙間時間等を用いて本を開くようにすること、

 ・内容が難解な本、分量の多い本はある程度読んだら内容をメモにまとめること

 ・座ってパソコンを開き文章を書く時間をルーチンとしてつくること

〇心理面でできたこと

 ・記事を書き終えた時の達成感、利点等を思い浮かべながら取り組む

 ・記事をかいたらビールを飲むなどご褒美、もしくは月〇本書けなかった場合ペナルティ

 ・完成度にこだわりすぎない

 ・記事を書く際に何がボトルネックになっているか、どうすれば改善できるか分析、実行

 

 すべての課題を急に解決、達成するのは難しいかもしれませんが、文章のトレーニングになる上に、自分の思考の整理になる、もしかしたらこの先誰かの役に立つかもしれないので、来年こそは1年で10本達成したいですし、達成するための工夫も実践していきたいと改めて思いました。